『スチームボーイ』

1866年、マンチェスターに住む13歳の少年、レイ・スチムは紡績工場で蒸気機関の技師として働いていた。
ある日、彼の元にアメリカで蒸気機関の研究をする祖父から荷物が届く。
それを追うようにして彼の家に祖父の雇い主であるオハラ財団より使者が訪れる。
彼らはその荷物が万国博覧会用に送られた物が手違いで自宅に届いたのだと説明、荷物を回収しようとする。
ちょうどその時、祖父ロイドが帰宅。父エディの死を告げ、荷物を決してオハラ財団に渡してはならないと
言って使者に抵抗、レイを逃がす。
逃亡をはかるレイだが、結局は逃げ切れずに財団に捕まってしまう。
そこで待っていたのは、祖父が死んだと言っていた父だった。
父は荷物の正体がスチームボール - 超高圧を封印した夢のエネルギー源 - だという。
巨大なボイラーの必要だった既存の機関にくらべ、ただの小さなボールで何倍もの出力を実現できる。
しかし財団はその技術を利用して開発した兵器を各国に売り込もうとしていた。


トレイラーを見る限りではあまり期待していなかったが、実際に鑑賞するとその印象は完全に覆された。
ストーリーは単純にして明快。しかしこの映画のすばらしさはそんな所にはなかった。
まず美術。ビクトリア朝の建物や屋内の家具、風俗が実によく描かれていた。
あらゆる建物がすばらしい。
また、歯車と蒸気の見せ方の素晴らしいこと。特にこの映画の主役である蒸気は、もわっと出てみたり、
勢い良く吹き出したり、ガラスドームの中で広がったりと、その美しさを存分に主張する。
またイギリス文化の演出も良い。
博覧会開会式から避難するビクトリア女王の描写、陛下の無事を確認する登場人物、
イギリス人はあくまでイギリス人らしく、アメリカ人とは明確に立ち振る舞いが違う。
まったくもって絵と演出は、なにもかもすばらしかった。
反面、大いに不満だったのが声優で、本職を使っていないためやはりカツゼツが悪く、
主役の鈴木杏は肺活量が足りなかった。
またくもって大友味を堪能できた120分。☆5つ。
ただしスタッフロール背景の後日譚がまんまロケッティアなのは、いかがなものかと思った。
すでに続編の制作が決定しており、巷の噂に寄れば「スチームガール」になるという眉唾物な噂。