『ハウルの動く城』

CORVO2004-11-27

15時40分より動物園前シネフェスタにて鑑賞。


いままさに戦争が始まろうとしているヨーロッパの某国。
出征する王国兵士たちを送るパレードの準備で街は大騒ぎ。
街は飾り立てられ、美女の心臓を喰らうという魔法使いハウルの動く城までもが現れていた。
そんななか黙々と家業の帽子作りに精を出す少女ソフィーがいた。
帽子屋の娘たちがはしゃぎながらパレードを見に行こうと誘うのにも目もくれない。
閉店後、ソフィーは美人の妹が売り子として働いているチェリーザの店へ出かけようとするが、
出征前の不安と享楽的な気持ちに支配された兵士たちに絡まれてしまう。
しかしそこへ金髪の不思議な青年が現れ、「探していたよ」とソフィーを兵士たちの手から救い出す。
青年ハウルは怪物に追われており、挟み撃ちされると空へ飛び上がる。
そしてチェリーザの店へ送り届けられるソフィー。
夢のような出来事にソフィーは心を奪われるが、その夜たずねてきた荒地の魔女に呪いをかけられ、
90歳の老婆にされてしまう。
混乱しするソフィーだが、このまま家にはいられないと荷物をまとめて出奔。
人里はなれた荒野でハウルの動く城に出会う。


非常に良かった。
ネタの豪華さでは『もののけ姫』『千と千尋の神隠し』に劣るが、
まとまり、完成度が段違い。しかしこの映画、意外と内容が難しいかもしれない。
一見単純なストーリーだが時系列が一本ループしているし、
複数の状況が同時に動いている。背景の端々から読み取れることも多い。
久しぶりにもう一度みたいと強く思う映画に出会った。
映像面でも街並みも船も自然の風景、すべてすばらしい。


事前情報では木村拓哉の声優がヒドイのではないかと言われていた。
しかしこれは見事に合格点。もともと私は木村拓哉という俳優を評価している。
たしかに木村拓哉木村拓哉の役しか出来ないのだが、木村拓哉としての演技が良い。
間の取り方や微妙な表情、あげくは体全体で雰囲気を表現する術を身に着けている。
つまりキャスティングが勝負な俳優だと思うのだが、ハウルは魔法使いということで
世間から浮いた雰囲気で、ちょっと謎めいていて、自信家でナルシーである。
つまりはキムタクにぴったり!
予告編でも流れているワーってなって風呂場から飛び出してくるところでは
ちょっとうわついていたが、実際には動かずマイクの前で、
アクションするキャラに合わせてテンションあげるのは高難度なのだろう。


倍賞千恵子は予想外にダメだった。
美輪明宏はキャラクターがそのままだから、もはや合ってるとか
演技とかってレベルではなかった。声優というより、出演、美輪明宏である。(笑)
炎の悪魔カルシファーも実に魅力的。


ネタバレ全開妄想暴走雑感
1.テーマ1「恋せよ乙女」
 作中、ソフィーが荒地の魔女にかけられた呪いの正体についての解説はない。
 しかし眠っている間は本来の姿に戻ること、楽しげな時にはやや若返って見えること
 などから、ソフィーの精神状態に左右されると思われる。
 つまり作中、少女ながら何事にも無感動で将来の夢もなかったソフィーが
 ハウルに出会って恋をする、というのが誰にでも分かる主軸である。
2.ソフィーの家庭
 作中、明確に説明されているわけではないが、母と妹の髪の色が同じで
 顔もにていることと、母の科白から想像するにソフィーの父は再婚で、
 妹レティーは母の連れ子であると思われる。歳の近いレティーとの仲は良好のようだが、
 享楽的な母親とはあまりしっくり行っていないように思える。
 終盤、マダム・サリマンに脅迫された母親がソフィーに会いに来たシーンでも
 母がソフィーのことを実の子ほど大事にしていないことは見て取れる。
3.ソフィーとハウル
 終盤、ソフィーは魔法で若き日のハウルが炎の悪魔カルシファー
 契約するシーンに出くわす。
 このシーンで少年ハウルはソフィーの事に気がついている。
 ということから最序盤でハウルとソフィーがはじめて会った時の
 ハウルの科白「さがしていた」は、彼女を兵隊からかばうための方便ではなく
 実は本当であったことに気がつくことが出来る。
 過去から戻っ再開した際にも、ハウルは「髪が星の色に染まった」と
 ソフィーの白くなった髪を評していたことから、何があったか完全に
 把握していると思われる。
4.倍賞美津子の声
 見終わってからの総合的な意見としては、ソフィーは呪いをかけられて老婆になるのだが、
 この呪いは本人の心の年齢に外見が合うというものだったのだろうと思う。
 すなわち、序盤のソフィーは老婆の心、呪いをかけられ姿も老婆に。
 中盤は心の動揺に合わせて少女に戻ったり中年になったり。
 そしてエンディングでは身も心も少女に戻る、と。
 この流れで考えれば、ラストでは軽く若々しい声が出るべきだが・・・
 どう聞いても40歳以下には聞こえんのが痛かった。
 奇をてらわず島本須美を使っていればまだよかったのにと思ったのは秘密。
5.国家総力戦の時代、あるいはクリスマスまでに終わった第一次世界大戦
 終盤、隣国の王子がソフィーに告白するが、王子行方不明が戦争の理由とすると
 この時代背景って第一次世界大戦の暗喩ではないかと思う。
 それまでの戦いが街を離れた戦場で貴族や職業軍人だけで行われていたものが、
 街を焼き市民を犠牲にし、国家がガタガタになるまで続けられるようになった。
 序盤、さっそうと出征していった兵士達や勇壮な鋼鉄艦の艦隊が
 中盤から後半にかけて壊滅し、ボロボロになって港に帰ってくる。
 空には巨大な飛行戦艦が飛び、街を爆撃して火の海にする。
 つまり開戦時の安易なムードから実際に戦火が身近に迫るところまで、
 実によく戦時下の雰囲気を描き出している映画でもある。
 一緒に映画を見に行った友人は、この作品を徴兵忌避映画であると言った。
6.ミセス・サリマン
 中盤以降、ハウルを捕まえようとする師匠にして王宮魔術師のミセス・サリマンだが
 彼女はどうも魔術面だけを担当しているわけではないように見える。
 ハウルの代理としてソフィーが王宮のミセス・サリマンを訪ねた際、
 遠景に外国の使節団らしき一行の姿を見ることが出来る。
 ここからミセス・サリマンは一方で戦争のために強力な魔法使いであるハウル
 捕まえようとしつつ、もう一方で和平のための交渉ルートを探っていると思われる。
 そして多分、戦争の理由であった隣国の王子がハウル達によって助けられる事により
 即座に停戦の交渉に当たることが出来たのだろう。
 だからこれはクリスマスまでに終わった、第一次世界大戦の物語でもある。
(実際のWWIでは戦争は何年も続き、英国では特定の年齢層がゴッソリいなくなるという
 恐ろしい事態に陥った。かつてクリスマスまでに終わるといわれた戦いは数多いが、
 実際に予定通り終わった戦争はない)
 ミセス・サリマンの周囲の小姓たちがみなハウルに似ていたのも何か意味があると思うが、
 わからなかった。ミセス・サリマンも最後にして最良の弟子であったハウルを、
 師匠としてかなり愛していたのだとは思う。
7.ヒン
 ミセス・サリマンの使い魔でありスパイとしてソフィーの元に送り込まれた犬、ヒン。
 すっかりソフィーになついてしまい、ぜんぜんサリマンに報告しないヒンだが、
 この犬のモデルは実は押井守らしい。
 するとクライマックス後にやっとサリマンに映像を送った際の彼女の台詞
 「何よ、いまごろ送ってきて。ハッピーエンドってわけ?裏切り者!」が
 なにか意味深に聞こえてしまうのだが。(笑)



なんじゃこりゃ、文字色反転の意味ないやん。
まあ内容はわからんからいいけれど、美しくない。
しかし長いだけで駄文だ。