某所での拾い物

「グオーンギギギギ」
「ドドドドドドドド」
賑やかなターボエレクトリックの騒音が、澄み切った海底にこだまする。
アメリカ様のお庭に集うP3C哨戒機たちが、今日も天使のような無垢な笑顔で、
背の高いソノブイを投下していく。
汚れを知らない船体を包むのは、深い色の遮音タイル。
国際関係は乱さないように、日帝ODAは翻らせないように、
ゆっくり前進するのがここでのたしなみ。
もちろん、炉心溶解ギリギリで走り去るなどといった、はしたないロシア艦など存在しようはずがない。


漢級(Type091)攻撃型原子力潜水艦
公元千九百七十四年就役のこの潜水艦は、もとは旧ソ連のロメオ級をベースにつくられたという、
伝統ある原子力潜水艦である。
葫蘆島。東シナ海の面影を未だに残している海底資源の多いこの地区で、
歴代主席に見守られ、建艦ドックからスクラップヤードまでの一貫運用が受けられる原潜の園。
時代は移り変わり、ソ連が崩壊してから十余年も経た今日でさえ、
二十年通い続ければ温室育ちの純粋培養鉄屑が箱入りで出荷される、
という仕組みが未だ残っている貴重な基地である。