陰山琢磨『蒼穹の槍』

冒頭、ソビエトアフガニスタン侵攻。
ある男の村が全滅する様が描かれる。
そして場面は変わり、今から15年の後、アフガニスタンでは再び内戦が勃発。
各陣営は麻薬資金を背景に豊富な兵器を取り揃え、
調停に乗り出した国連派遣軍を苦しめていた。
国連派遣軍の第一の目的は、アフガニスタンで生産される麻薬生産拠点の壊滅。
そんななか、世界の麻薬組織の頂点に立ち、さらに麻薬取り締まりに
力を入れ始めた各国政府に牽制球を投じようとする男がいた。
ケニアではイスラム資本のロケット打ち上げ会社で、正体不明のペイロード
打ち上げ準備が進められ、一方、日本の大阪では、個人営業のゲームプログラマー横田に
長距離無誘導弾の照準システムが、映画の設定という名目で依頼される。
横田は不審な依頼元の正体を探る為、ネットワークにワームを放ち、
その逆探知によって事務所が襲撃され、恋人を殺される。
またケニアの打ち上げ会社では、技術スタッフの小夜がペイロードの中身を探って
ガードマンに発見され、偶然いあわせてかばおうとした恋人を射殺される。
そしてついに日本の原子力発電所に向けて、あまりにも単純で
あまりにも高度な技術を要する代物が、衛星軌道から投げ落とされる。


風呂敷が畳まれに掛かるまでは見事。
矛盾点も、文章の勢いで押し切ろうという思い切りのよさが気持ちいい。
転結の部分がきれいにきまっていないという訳ではなく、むしろ奇麗に決まりすぎ。
もっと破天荒な展開と、サービス旺盛な結末を期待したのは贅沢なのだろう。
久しぶりに出来の良い仮想安全保障小説(それも日本製の)を読めた。
それにしても天六とか飛田とか・・・作者が勤めていた橋梁会社って、
まさか日商岩井系で弁天町にあるんじゃないだろうな。