『白いカラス』

監督:ロバート・ベントン
原作:フィリップ・ロス「ヒューマン・ステイン」
Cast:アンソニー・ホプキンスニコール・キッドマンゲイリー・シニーズ
  エド・ハリスウェントワース・ミラー、アンナ・ディヴァー・スミス


今年の私はついている。毎月2〜3本映画を観ていれば、1〜2本はハズレがあるものだ。
だが今年は今のところ、一本足りともハズレが無い。
強運に気を良くして全く何の事前情報も無くTVで予告編を見ただけで、この映画を観た。
監督がロバート・ベントンアンソニー・ホプキンス、ニコールキッドマン、
ゲイリー・シニーズエド・ハリスが出演。
どう考えても大ハズレになりようがないメンツである。


名門大学の文学部長であるコールマン・シルク(ホプキンス)は、ユダヤ人初の
文学部長である。かれは一度も講義に出ない学生を講義中に"Spook"幽霊と呼んだことが
人種差別的と問題にされ、大学を追われる羽目になった。
Spookは黒人の蔑称としての意味があり、当の学生は黒人だったのだ。
彼は言う。一度も講義に出ない学生が黒人であることを私が知っているはずがない。
まったく講義に出ない学生の事を「彼は幽霊(Spook)か?」と言った。
文脈から見ても“黒人”という意味のわけが無いではないか、と。
しかし反論は通じず、かれは大学を辞職、ショックが元で妻は死亡した。
半年経っても怒りの収まらない彼は、森の奥の山荘に隠遁する作家
ザッカーマン(シニーズ)を訪れ、この話を小説化しないかともちかける。
ザッカーマンは自分で書くことを勧めたが、これをきっかけに二人は友人となった。
この交友を通じてザッカーマンは隠遁生活に終止符を打つ事になり、
コールマンも心の平穏を取り戻す事が出来た。
そんな時、コールマンは郵便局でファーニア(キッドマン)と出会い、恋に落ちる。
しかしファーニアは、別れた凶暴な夫(ハリス)がつきまとわれるという問題を
抱えており、コールマンもそれに巻き込まれる。
警察沙汰になったことから交際を反対するザッカーマンだったが、
紆余曲折を繰り返しながらも二人の距離は縮まっていき・・・


非常に映像の美しい映画だった。
傷ついた老人を演じるホプキンス、複雑な過去を持つスレた女を演じるキッドマン、
人の良い小説家を演じるシニーズ、狂気をはらんだ謎の男を演ずるハリス。
みなこれまでの役柄から考えると新鮮だったし、すばらしい演技だった。
唄って踊るホプキンスとシニーズという珍しいシーンも見られた。(笑)


ネタバレは避けるが、人種差別問題をテーマとした人間の生き様の映画であった。
激しく私好みのジャンル。
幸福を掴む為に自らついた嘘が、やがて自分自身を傷つけていく。
しかし見る人を選ぶんじゃなかろうか。
☆4つ