トロイ

監督:ウォルフガング・ペーターゼン
Cast:ブラッド・ピットエリック・バナオーランド・ブルームブレンダン・グリーソン
    ピーター・オトール、ダイアン・クルーガーブライアン・コックスショーン・ビーン


ホメロスの「イリアス」に描かれたトロイ戦争。
スパルタの第2王子パリスは、和平交渉に訪れたスパルタの地で王妃ヘレンと恋に落ちる。
王妃を連れ去られ面目を失ったスパルタ王メネラウスは、兄であるアガメムノン王に頼んで
トロイに戦争を仕掛ける。
アガメムノン王の軍勢には最強の戦士アキレスがいるが、かれは王と反目し、簡単に従うことはなかった。
そのためアガメムノンはアキレスの友人であるオデッセウスを頼み、彼を説得させる。
アガメムノン王のギリシャ軍は1000隻の船を揃え、強大な軍勢でトロイに迫るが
トロイには何世紀にも渡って街を守り続けた城壁と名将ヘクトルがいた。


まあなんといいますか、トロイ戦争なので普通にストーリーは知っているわけで、
その中で何をどう見せてくれるかと言うところに興味があった。
まず残念な点を挙げるとすれば、やはり生活習慣の考証には多少不満があった。
しかしこの点に関しては、「グラディエーター」でも「パッション」でも・・・というより
キチンと描かれている映画を見たことがない。なのでこの辺は基本的に目を瞑った。
しかし、建物や兵士達の甲冑、はては馬具にいたるまで、実によく出来ていた。
ここまで考証のしっかりした映画は、これまで無かったんじゃなかろうか。
良かった点はいくつもあって、特にやはり戦闘描写がすばらしかった。
近年、「ブレイブハート」以来、古代戦闘の激突シーンの撮影・演出・特撮技術が向上してきて
ロード・オブ・ザ・リング」の騎馬突撃はじめ見事な集団戦闘シーンを見せてくれるようになった。
歩兵と弓兵の連動がいいのは当然としても、槍を構える切れ込みの入ったタワーシールドで壁を作り、
敵との激突を受け止め、その背後からラウンドシールドと剣の、より軽装な部隊が襲いかかるあたり。
また、アキレスらが最初に上陸した際に取ったラウンドシールドを集めて亀の甲羅のようにして
敵の矢を防ぎ、肉薄する戦法。いずれも素晴らしかった。
また個人での戦いにおいても、相手に盾で防がせることで視界を奪ったり、
的確な打撃を与えることによって、じわじわと傾いていくバランスだったり。
奇跡の大逆転なんか起きようのない、実にシビアな戦いが演出されていた。
正直なところアキレスの強さをどのように表現するかが心配だったのだけれども、
さすがドイツ人監督、その辺のぬかりはなかった。
最初の巨人との戦いでは俊敏さと技術を印象づけ、それ以降の常人レベルとの戦いでは
やはり技術でもって的確な打撃を与えることで自分の力を何倍にもしている。
パリスが弓の技術を上げるところはレゴラスとイメージがかぶって、ちょっと笑った。


また、俳優達もすばらしかった。トロイ王プリアモスを演じるピーター・オトール、
トロイの王子にして名将ヘクトルを演じるエリック・バナ
オデッセウスを演ずるショーン・ビーン、みんな格好良い。
オーランド・ブルームも、恐ろしくはまっていたし、となると問題はブラピが
ちと現代的すぎる容貌・・・というより表情筋の使い方だというところか。
どうしたってアメリカ人の現代劇俳優なんだな。
逆を言えば、その印象が浮いたところも利用されていたきらいがある。
そう考えると、ヴォルフガング・ペーターゼン恐るべしと言ったところか。
アキレスにしてはお上品すぎるのではあるが・・・・
つうかドイツ人が撮るとこうなるのか?
イリアスを元に、実際にあったであろうトロイ戦争を描いたというスタンスなのだろうか。
イリアス」の映画化としては別物以外のなにものでもないが、映画単品としては☆4つ。


ところでカッサンドラはどこ行った?